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東北地方太平洋沖地震による津波堆積物(匝瑳市〜旭市) [巡検・露頭]

東日本大震災により被災された方々に,心よりお見舞い申し上げます。

津波は,海底から地表まで,及んだ範囲の様々なものを侵食・運搬して押し寄せます。津波によって運ばれてきたもの(津波堆積物)を,千葉県の津波被災地である匝瑳市〜旭市にかけて見てきました。

匝瑳市野手の海岸です。
P4103521_匝瑳市野手.jpg
九十九里浜には,自転車専用道路が整備されています。その専用道路が砂で覆われ,10cm〜20cm位の石もあります。表面には,津波の流れでつくられたリップルマーク(カレントリップル)ができています。カレントリップルマークは,上流側が長く緩い傾斜,下流側が短く急傾斜をしており,形から流れの方向を知ることができます。このことから津波は,画像奥から手前に流れてきたことがわかります。

P4103526_匝瑳市野手.jpg
津波によってなぎ倒された草です。海から陸に向かって(画像では右から左)に倒れています。上部の草は直立していることから,そこまでは津波が達しなかったことがわかります。

あさひパークゴルフ場です。
P4103531_旭市パークゴルフ場.jpg
ゴルフ場の敷地も砂に覆われ,いたるところにリップルマークが見られます。

旭市野中の防風林です。すぐ近くに,野中川河口があります。
P4103535_旭市野中.jpg
左側が海です。この辺りは防風林が広がっていますが,津波は防風林を突き抜けてきたのでしょう。倒れた柵には,松の葉や枝が引っかかっています。

P4103544_旭市野中.jpg
防風林の中は,一見,変化がないようですが・・・。少し開けたところでは砂が積もっていて,草の葉が所々に見られます。掘ってみると,根を張っている土壌(茶色の部分)の上に,砂が5cmほど堆積しています。

旭市三川,海岸線から300〜400m,陸に入ったところです。
P4103549_旭市三川.jpg
キャベツ畑と,奥には水田が見えます。ここは,川を遡ってきた津波が溢れ出したところです。

P4103548_旭市三川.jpg
キャベツの葉の間にも,砂が詰まっています。

P4103550_旭市三川.jpg
川沿いの道路には,砂が10cmくらいの厚さで積もっています。画像左側が海です。リップルマークの右側が長くて傾斜が緩く,左側が急斜面になっていることから,陸から海に向けて水が流れたことがわかります。津波が引くときに堆積したものと考えられます。

P4103561_旭市三川.jpg
断面を見ると,左に傾斜したラミナ(黒いスジ模様)が見られます。ラミナ(葉理ともいいます)は,水の流れによって砂が堆積するときにつくられる模様で,その形から,流れの方向や速さを知ることができます。画像の場合は,右から左に水が流れたことを示します。つまり,海に向かって水が流れたことわかります。

P4103563_旭市三川.jpg
畑の上にも,海(画像左側)に向かって流れたことを示すリップルマーク(カレントリップル)が見られます。断面を見ると,下から,赤土(畑の土)→砂→泥→砂の順に堆積しています。
津波が海の砂を内陸まで運び,畑を覆いました。津波が押し寄せたあと,しばらく海水が溜まった状態があったのでしょう,砂の上の泥はその時(流れがない時)に積もりました。津波が引き始めた時,再び砂が流されてきて,リップルマークをつくりながら泥の上に積もったと思われます。

P4103596_旭市三川.jpg
畑の別の部分です。左側が海です。海(正確には川の氾濫場所でしょう)から陸へ向かうリップルマークの断面が良く分かります。砂層の下部には平行ラミナが見られることから,津波による水流が速かったことがわかります。その後,流速が遅くなり,リップルマークがつくられました。ここも,リップルマークを覆って薄い泥の層と,その上の薄い砂の層が見られます。一番上の砂がつくるリップルマークの向きは,不鮮明で方向がわかりません。

旭市でも被害の大きかった,下永井の海岸です。
P4103576_旭市下永井.jpg
ここのリップルマークは,陸から海へ流れたことを示しています。波打ち際から70m〜100mの範囲に見られます。陸側には,高さ2m程の遊歩道兼堤防を挟んで道路があります。道路沿いの家屋が,大きな被害を受けていました。

P4103574_旭市下永井.jpg
断面には,平行ラミナが見られます。草の葉と防湿剤の袋が,埋まっています。草はここに生えていたもの(下の方に根が見えます)ですが,防腐剤は津波で被災した家から流れてきたものでしょうか?

P4103580_旭市下永井.jpg
所々に,赤土のかたまりが落ちています。同じ様な赤土は,道路沿いの民家の庭にも見られます。

P4103583_旭市下永井.jpg
砂の中にも,5mm程の赤土が見られます。市街地を襲った津波が引いて行くときに,民家の庭から運んできたのでしょうか。

※リップルマークやラミナについては,これ以前の記事をお読みください。
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